朝岡 真木子
Asaoka, Makiko

朝岡真木子は東京生まれ、東京芸術大学付属高校を経て、東京芸術大学音楽学部作曲科卒業。現在は歌曲を中心とする作曲家及びピアニストとして多方面で活躍中。2011年「音のポケット」により日本童謡賞を受賞。歌曲集「愛は光の中に」(音楽之友社)、「花筏」「音のポケット」(全音楽譜出版社)、女声合唱組曲「妖精模様」「まほろばの大和し美し」(全音楽譜出版社)、混声合唱組曲「富士」(ドレミ楽譜出版社)、「クラブサンのための4つの小品」(日本作曲家協議会出版)、オペレッタ「夫の宝物」、オペラ「坦庵 熱き心の火」(国民文化祭参加作品)「三百年姫」等、作品多数。(社)日本歌曲振興会理事、(社)日本演奏連盟、(社)日本童謡協会各会員。

花のワルツ(1996)
Waltz of the flowers

【作曲者記】 1996年に作曲の歌曲集「愛は光の中に」(全7曲)(音楽之友社)の中の、第4曲目になります。 作詩は笠原三津子氏。「すみれ たんぽぽ 菜の花 さくらも咲きました?」で始まります。春になり、あなたからのお手紙に返事を書く私。書いては消し、書いては消し。どきどき、うきうき、わくわく。パステル調のイメージ。そんな嬉しい乙女心を想像しながら、軽快な3拍子にのせて作曲いたしました。

なぎさ(2000)
Seashore

【作曲者記】最初は歌曲として作曲した「なぎさ」は、2000年5月に初演された(ソプラノ田嶋喜子、ピアノ朝岡真木子)。その後、女声合唱組曲「海の祈り」の中の1曲として合唱に編曲、マンドリン・オーケストラ用には2007年に編曲、初演された。「風は伝えたかった 砂に想いを 浜辺のキャンバスに 描いた模様は 風のこころの造形〜」で始まる美しい詩は、詩人木下宣子さんによるもの。

リオの海風 (2006)
“The Sea Breeze of Rio” for mandolin orchestra

マンドリン・オーケストラのための「リオの海風」は作者初めてのマンドリン合奏曲であるが、合奏団アンサンブル・マーレによる委嘱作品で2006年の第22回定期演奏会で初演された。作者は父親の仕事の関係で幼少期をブラジルのリオデジャネイロ(通称リオ)で過ごし、なお記憶に残るコバルト・ブルーのきれいな海の色、海岸に続く歩道の美しいタイルの幾何学模様、踊ることの大好きな人たちの印象を、思い浮かべながら作曲したという。
この曲は2拍子と3拍子の組合せによる5拍子のリズムでメロディは流れていくが、これはまさにブラジル音楽の原点を表わしているようだ。つまりリオといえば、ブラジルにおけるサンバやボサノヴァの中心地であるが、そのブラジル大衆音楽のルーツであるショーロを演奏する中心楽器はバンドリン、つまりブラジルのマンドリンである。このバンドリンの形はフラット・バックでポルトガルギターそっくりの楽器である。作者はバンドリンのことを詳しく知ることなくこの5拍子のリズムに乗った作品を作曲したのであるが、リオの海の向こう側のヨーロッパ大陸のポルトガルから、海風に乗って楽器と共にやってきた2拍子のポルカと3拍子のワルツのショーロ風組合せ曲を、しかもマンドリン・オーケストラのために作り上げたとは何という偶然の賜物であることか! そしてそのメロディはショーロの魂、サウダーデ(郷愁)に満ちあふれている。

イグアスの虹 (2009)
Rainbow over Iguazu Falls

オルケストラ“プレットロ”の第6回定期演奏会のための委嘱作品。マンドリン・オリジナル合奏曲としては、「リオの海風」に次ぐ2曲目となる。
【作曲者記】ブラジル、アルゼンチンの国境にある「イグアスの滝」は、最大落差80m、滝幅4km、世界最大の滝で、世界遺産に登録されています。晴れている時は、いつも虹が幾重にもかかっていて、それは昼間だけではなく、満月の夜には月の光に照らされた虹が見えるとのことです。先住民のグアラニ族は、満月の夜には、石の神様や魚の神様、いろいろな神様が集まってくると信じて、遠くから見守っているそうです。自然のエネルギーの壮大さ、神秘的なロマンに思いを馳せながら作曲をいたしました。

リオの祈り(2013)
Rio’s prayer

オルケストラ“プレットロ”東京の第10回定期演奏会のための委嘱作品。
【作曲者記】 「リオの海風」「イグアスの虹」に続くブラジル3部作の今回、私の頭に浮かんだのは、ブラジルの代表的な景色であるキリスト像とサンバのリズムでした。海を見下ろすコルコバードの丘に立つ両腕を広げた大きなキリスト像は、カトリック国ブラジルの深い信仰の象徴として親しまれています。 にぎやかで明るいイメージのサンバですが、実は19世紀にアフリカから強制連行された奴隷労働者たちが、祈祷所で打楽器のリズムにのって激しく踊ったことに、さまざまな要素がプラスされて生まれました。「海岸に一人、遥か彼方のアフリカに想いをはせる時、心に渦巻いた故国や肉親、家族への強烈な思慕に涙を流さずにはいられない。」というようなサンバのCDの解説文に閃きを戴き、この「リオの祈り」を作曲いたしました。 冒頭のギターは、そういった海の静かな波であり、マンドリンのメロディーはサウダージ(ポルトガル語で、思慕、せつなさ、郷愁、憧憬の意味)を表現しています。そこに次第にサンバ的な要素が現れ、終盤では教会、キリスト像に祈りをこめ、明るく救われるハッピーエンドにいたしました。

リオの息吹(2019年)
The pulse of Rio

オルケストラ“プレットロ”東京の第16回定期演奏会のための委嘱作品。リオの三部作として、「リオの海風」「リオの祈り」に続く3曲目となる。
【作曲者記】 マンドリンオーケストラのための曲として今までに「リオの海風」「イグアスの虹」「リオの祈り」を作曲してきました。今回はリオの三部作にしたいという気持ちが強く、「リオの息吹」を作曲させていただきました。そのリズム等からリオの街の活気や呼吸、気配などを感じとっていただけましたらと思います。 私は幼少の頃に父親の赴任先のブラジルのリオデジャネイロで過ごしたことがあり、そのことは私の音楽に少なからず影響していると思っています。リオデジャネイロでの記憶は断片的ですが、リオに旅行された方から「夕食後に海岸に散歩に行ってみたら、少年達が海辺でサッカーをしていた」というお話しをお聞きしました。冒頭のリズムは、そのお話しから得た印象で作曲しました。ボールの受け渡しのようなリズムに乗せてマンドリンが奏でるメロディが、この曲のメインテーマになっています。中間部に問いと答え、会話のような上行と下行の応答部分が出てきますが、こちらもサッカーボールの受け渡しのイメージです。その次に出てきます3拍子のユーモラスでもある部分は、リオで見た記憶の、ふわふわと浮かぶ凧の印象です。(お祭りの夜でしたか、凧の中に火が入っていて?カイカイバルーンと言っていた覚えがあるのですが…) 曲の最後はサンバで明るくにぎやかに終わります。 演奏して楽しく、聴いて楽しくという作品が出来ればと常々思っています。

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