澤井 廣喜 (1938-)
Sawai, Hiroyoshi

澤井廣喜は東京生れ、慶應義塾高校入学と同時にマンドリンクラブに籍を置きギターを始めた。大学に進むと指揮を指導者の服部正に師事し、クラブの学生指揮者を努めた。卒業後1963年に第1回演奏会を開催したアンサンブル・プレットロ合奏団の指揮者となり、合奏団解散までの第7回定演まで毎年指揮を務めた。
しばらく音楽からは離れていたが、1996年イタリアにおけるリチャード・シュマッハ教授の講習会受講を皮切りに指揮法修行を再開、チェコ、ウィーンにおけるクルト・レーデル教授の国際指揮マスター・コースに度々参加し、2003年無事ディプロマを取得した。指揮の勉強に平行して作曲した本作品を、2001年のアメリカ・クラシック・マンドリン協会主催の第3回作曲コンクールに応募し、見事第2位を獲得した。

ルガーノ湖にて (2000)
At the Lake Lugano

イタリアの最北部、スイスのアルプスに連なる山々に囲まれ神秘的で美しいルガーノ湖は、湖畔がイタリア領とスイス領に分かれています。近隣各国の主要都市へは、そこそこの時間で行ける長期滞在旅行者にとっては便利なところです。
歴史的には1789年のフランス革命以来のナポレオンによる、更に1815年以降のオーストリア系小君主による圧政に対して、ミラノ、コモ (コモ湖) を中心とした反オーストリア運動に、命をかける若者達のリソルジメント運動(イタリア祖国統一運動)が広がっていきました。ルガーノ湖周辺も例外ではありませんでした。
私はこのような歴史的背景のあるルガーノ湖畔にあるレストラン系ホテルで、1996年夏、約1ヶ月間初心に帰り、リチャード・シュマッハ教授の講義を受けていました。言葉は不自由ですが、各国の受講生 (各国オーケストラの副指揮者や先生) との音楽談義や、毎日各地で行われる教会やホテルでの小演奏会は、私にとって忘れられない日々でした。
この曲はそんな生活のなかでスケッチしたものです。夜明けの朝5時頃に起き、窓から見えるルガーノ湖はまだ暗い。静寂な霧、靄の中から少しづつ光が射して、太陽が昇ってくる様は、素晴らしいの一言につきます。目を閉じると、ローマ帝国、文明開化したルネッサンス期、小都市国家期の良き時代、そしてナポレオン、オーストリア (ハプスブルク家) の圧政時代、この静かなルガーノ湖は、何を見てきたのだろうか・・・。そのような思いに駆られながらこの曲が出来上がりました。
曲は複合3部形式、恋人の会話にマンドリンとマンドラのソロで小協奏曲の形をとりました。

導入部 : 湖畔に、夜明け、リソルジメントの若者、恋人達が圧政と戦うべく集まってくる。
1部 : 恋人達の会話、別れ、励まし、喜び、
2部 : 陽気な踊り、心のかっとう、励まし、
3部 : 1部の再現
コーダ : 戦いに出る前に恋人達の変わらぬ愛を誓って終る。

なお、この曲は、マンドリン奏者山口寛に献呈したものです。

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