服部 正 (1908-2008)
Hattori, Tadashi

服部正は東京生れ。青山学院中等科時代に仲間とマンドリンを始め、慶應義塾大学予科入学と同時に慶應義塾マンドリンクラブ (KMC) に入部し、マンドラ・パートと指揮を受け持った。マンドリン合奏曲の作曲も始め、大学卒業前の1930(昭和5)年に行われたオルケストラ・シンフォニカ・タケイの第3回合奏曲作曲コンコルソに、「叙情的風景」を出品して見事入賞し (1, 2等なしの3等)、それが作曲家への道の発端となった。卒業後、菅原明朗氏に師事してプロの道に進んだが、母校慶應義塾マンドリンクラブの指導者としても半世紀以上にわたって指揮をとり、250曲以上のマンドリン合奏曲の作曲、編曲をした。管弦楽曲、歌曲、オペラ、音楽劇、バレエ音楽、映画音楽等の作品も続々と発表し、1936(昭和11)年の日本音楽コンクールの作曲部門では、「西風にひらめく旗」が第1位に入賞した。その後はラジオ・テレビの連続放送劇の音楽担当として活躍し、「向こう三軒両隣り」「やん坊にん坊とん坊」「バス通り裏」は特に有名である。また歌曲「野の羊」は日本の歌曲10選に選ばれ、青少年オペラ「手古奈」も広く愛好された。日本中の誰もが知っている「NHKラジオ体操第1」の音楽の作曲者でもある。享年100歳にて2008年8月に永眠。

海の少女 (1942)
A Maiden on the Shore

マンドリン五重奏として、昭和18年6月KMC第60回記念演奏会で初演された(原曲は木管五重奏曲「鳥の組曲」の中のもので、NHKにて放送されている)。今日でも合奏曲としてよく演奏され、氏のマンドリン・オリジナル作品としての代表作の一つになっている。 曲は前半、海辺をはつらつと走りまくる若き乙女の躍動感を表わし、後半、浜辺に横たわりながら物思いにふけり、甘美な夢を描く少女の感傷を謳い上げている。

人魚姫 (1955)
“The Little Mermaid”

服部正は戦前は青年日本交響楽団を、戦後は日本女子管弦楽団を創立し、日本のアンドレ・コステラネッツと呼ばれるなど、クラシック音楽の大衆化を目指してレギュラーオーケストラの世界でも活躍したが、その比較において常にそれまでのマンドリン合奏の弱々しさを痛感していた。そこで多くてもせいぜい30〜40人ぐらいであった合奏から100人のオーケストラを目指して、それにふさわしいダイナミックな作品の作曲を考えていた。 そして1955(昭和30)年11月、ミュージカル・ファンタジー「人魚姫」(デンマークの童話作家・詩人アンデルセンの童話) を、ソプラノ、テノール、混声合唱、語り手とマンドリン・オーケストラによる音楽物語にした45分の大作を書き上げた。慶應義塾マンドリンクラブ第75回定期演奏会 (昭和30年) において、100人のオーケストラと200人の合唱で初演されたが、これはまさにプレクトラム合奏の大改革であった。この録音はその年、NHKクリスマス特集で放送されラジオ放送特別賞をとった。 この成功に端を発して、1956年「シンデレラ」、1957年「かぐや姫」、1959年「白雪姫」、1960年「ギター弾きのケリブ」、1971年春「ナイチンゲール」、1971年秋「手古奈」の、全7曲のミュージカル・ファンタジー (マンドリン・オーケストラのための音楽物語) を作曲した。どの曲をとっても親しみやすく明朗で、かつ哀愁を漂わせ、聴衆を最後まで惹きつける服部正ならではの日本人の感性にあった楽しい作品である。

「シンデレラ」 (シャルル・ペロー原作) (1956)
“Cinderella”(written by Charles Perrault)

1955(昭和30)年、卒業25年を記念して大作ミュージカル・ファンタジー「人魚姫」を発表し大成功を収め、第2弾として翌年作曲したのが「シンデレラ」である。「シンデレラ(灰かぶり)」はグリム童話やシャルル・ペローのものなどがあるが、この台本はペロー原作から伊藤海彦により作詞・構成された。ソプラノ、テノール、合唱、語り手、そしてマンドリン・オーケストラによる音楽劇。

かぐや姫 (1957)
KAGUYA-HIME

ミュージカル・ファンタジー「かぐや姫」は、マンドリン・オーケストラに、ソプラノ歌手、男声四重唱、語り手を加えた音楽物語で、1957(昭和32)年12月1日慶應義塾マンドリンクラブ第79回定演において初演された。演奏は評判を呼び、この時の録音がNHKの「婦人の時間」でも放送された。

イタリアン・ファンタジー(1965)
Italian Fantasy

服部正はメドレー式の構成・編曲によるアルバム風の作品を何曲か手掛けているが、この作品もその中の一つ。幕開けの曲は、1960年のサンレモ音楽祭で金賞を獲得した「ロマンティカ」とメンデルスゾーンの「交響曲第4番イタリア」。続けてオッフェンバックのオペラ「ホフマン物語」より「ヴェニスの舟歌」が歌われる。次いでトスティの歌曲「マレキアーレ」、イタリア民謡の「遥かなるサンタルチア」「麦打ち」「チリビリビン」「フニクリ・フニクラ」と続き、コーダは再びカンツォーネの「ロマンティカ」と交響曲「イタリア」のメロディが交互に奏でられ幕を閉じる。

Copyright(C) Orchestra “Plettro”